【羽生結弦さんプロ3年(2)】銀盤に込める祈り「寄り添って滑っていきたい思い、根本にある」

[ 2025年7月19日 13:21 ]

プロ3周年を迎えた羽生結弦さん(撮影・小海途 良幹)
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 フィギュアスケート男子で五輪連覇者の羽生結弦さんが19日、ちょうどプロ3年の節目を迎えた。昨年9月の「能登半島復興支援チャリティー演技会」、30歳の誕生日を迎えた昨年12月7日から今年2月まで完走したアイスストーリー第3弾「Echoes of Life」、3月に宮城での「notte stellata」など、見る者の想像を超えた演技で魅了。孤高の道を走り続ける羽生さんが、その思いを語った。(取材・構成 大和 弘明)

【(2)根源的なテーマ】

 ――「Echoes of Life」はじめアイスストーリーでは「生きる意味」を問いかけ続けている。そのテーマを伝えられている手応え、今後の方向性はどうなるか。
 「根本には、それがあり続けたいと思っています。去年の能登半島のチャリティーから始まり、3月の『notte stellata』までで考えるなら、自分が今まで滑ってきた中でも震災関係であったり、どこかに対しての寄り添って滑っていきたい思いはやっぱり常に根本の中にある。そういうことも含めた上で、自分が滑る意味というものは、何かしらの祈りだったり、誰かが見た時に凄くポジティブな意味ではなくてもいいけど、『今を生きている』ということ、これから『生きたい』と思えるような演技を常に根幹に持っておきたいと思っています。ただ、演技は、ずっとしっとりなものでもないし、ずっと哲学をするわけでもない。たまにはレミ(Let Me Entertain You)みたいな明るい曲だってある。(天と地の)レクイエムみたいな凄く暗い物語というか情緒的なものであったとしても、その中身には『生きる』が存在した上で、いろんな表現を追求していきたいなという気持ちはあります」

 ――「Echoes of Life」では人生の選択の連続が今につながる、というメッセージが込められていた。翻って、羽生さんは節目で自分の人生をいろいろ振り返った時、平行世界があるなら自分はどうなっているかなど考えたことはあるか。
 「凄く考えます。凄く分かりやすく言ってしまえば、僕がフィギュアスケートを選ばないで野球を選んでいたら、どんな世界だったのかな?と。こんな体格でもあるので、もちろん160センチで活躍している野球選手もいますけれども、一般論としては160センチの選手が活躍する未来ということはそんな簡単に描けるものではないじゃないですか。そういうことを考えた時に、僕がフィギュアスケートに出合えてなくて、野球の道を出たら途中で例えば中学校の部活レベルで終わっていて、高校はもっとちゃんと勉強の道に走ってたのかな、とか。でも音楽が好きだから、もしかしたら音楽の道に走ってたかもしれないな、とか。いろんな想像をしますね。でも、それこそフィギュアスケートというものを選んでしまった世界に今のところいるので、今のところ。世界がどうなるかは分からないですが」

 ――やはりフィギュアスケートに出合えたことが羽生さんの今を構成してるということか。
 「1番大きいのは、やっぱりそこじゃないですかね。もちろん、細胞分裂の時代にこういう風に細胞分裂してこられた、みたいなところもたぶんあると思うけど。でも自分の意思で決めたという点に関して、1番大きなターニングポイントだったのは、やっぱりフィギュアスケートを選んだところだと思う。平行世界で違うところを見たら、学者をやってるかもしれないし、コンビニでバイトしてる人間かもしれない。分からないけど。そういう平行世界を考えるたびに、一生懸命生きていたいと思います」

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