朝ドラ「ばけばけ」で生きる髙石あかりの「部分」

[ 2025年10月8日 08:15 ]

連続テレビ小説「ばけばけ」第8回でトキ(髙石あかり)が見合いを終えた場面(C)NHK
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 【牧 元一の孤人焦点】強烈な光を放つ芝居。時代劇なのに現代劇の動きのようでもある。それは主演・髙石あかり(22)の個性を存分に生かした一場面だった。

 10月8日放送のNHK連続テレビ小説「ばけばけ」第8回で、家の借金返済を目指す主人公・トキの見合いが描かれた。

 目を引いたのはトキが見合いの部屋から出た後の場面だ。障子を閉めると一呼吸置いて深いため息。そこまでは普通だが、そこからが型破り。トキは縁側で大の字に倒れ込んで「はあ~、終わったあ」と笑いながら身もだえした。

 演出した村橋直樹氏は「撮影で髙石さんに『自由にやってください』と伝えた。ただ、実際には自由にできる現場ではなかった。本当は障子を閉めた瞬間に倒れたかったが、かつらが邪魔になるから、そのまま倒れるわけにはいかなかった。それを感じさせないところが髙石さんで、うまく体を動かし、かつらを縁側の外に出している。感情をバーっと出すのは髙石さんならではで、それがあの場面に表れている」と話す。

 トキのモデルは小泉セツ(明治時代の作家ラフカディオ・ハーン=小泉八雲の妻)。髙石は2892人が応募したオーディションで主演に選ばれた。制作統括の橋爪國臣氏は「髙石さんの内に秘めた繊細な感情表現に現場にいたスタッフみんなが心を奪われた」と説明。脚本のふじきみつ彦氏は「最終オーディションを拝見した時、自分が明治時代の松江にいてハーンさんとの会話をのぞき見ているような感覚に陥った。髙石さんがセツさんに化け、セツさんが髙石さんに化けて目の前に現れたような…」と話している。

 髙石は2014年、avex主催のキッズコンテスト「キラットエンタメチャレンジコンテスト2014」で「ナルミヤオンライン賞」を受賞して芸能界入り。19年に俳優業を本格化させ、21年公開の映画「ベイビーわるきゅーれ」で初主演。今年に入り、生徒役を演じたドラマ「御上先生」や主演ドラマ「アポロの歌」、主演映画「ゴーストキラー」などで注目された。演技力の高さから「令和の憑依女優」とも称される。

 トキをどのように演じているのか。演出の村橋氏は「私たちは『髙石さんのままやってください』と言っている。時代劇の現場に役者さんはどうしても時代劇を意識して入ってくるが、どのように演じてもらっても、こちらで映像的に時代劇に仕上げられるので安心して自分の芝居をしてほしいと、髙石さんに限らず出演者の方々に伝えてある。髙石さんはご自身でも『トキと私は同じです』と言っていて、役になり切るというより自分の部分を使っていると思う。私たちは彼女のその部分を殺さないようにしている」と説明する。

 それが端的に表れたのが見合い後のあのシーン。私にはとても好ましかったが、視聴者が長くこの作品に見入るかどうかは、それに対する好嫌に懸かっていると思う。

 ◆牧 元一(まき・もとかず) スポーツニッポン新聞社編集局文化社会部。テレビやラジオ、音楽、釣りなどを担当。

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