相川亮二という男 「僕は城島健司と立場が違う」アテネ五輪の日本代表を支えた若く真摯な捕手

[ 2025年10月18日 13:38 ]

セCSファイナルS<神・D(3)>スタンドのファンにあいさつする三浦監督(右)と相川コーチ(撮影・椎名 航)
Photo By スポニチ

 【君島圭介のスポーツと人間】

 DeNAの新監督に相川亮二ディフェンスチーフ兼野手コーチ(49)が就任の方向だという。

 横浜(現DeNA)時代は選手会長、ヤクルト移籍後は外様にもかかわらず主将を務めた。2004年のアテネ五輪で相川氏に接したが、とにかく“真面目”な印象だ。

 アテネは日本がオールプロで臨んだ初の五輪だった。現在のような全面的な参加ではなく、各球団から2名の選出という条件付き。

 しかも五輪開催中もペナントレースは中断しなかった。

 横浜(DeNA)から選ばれたのは三浦大輔氏(現DeNA監督)と相川氏だった。

 五輪直前のイタリア・パルマ合宿中、日本代表の宿舎に詰めていると、我々記者のパソコンを求めてよく選手たちが集まってきた。

 日本での自チームの試合結果と成績がみんな気になるのだ。今なら世界中どこにいてもNPBの試合をネット観戦できるが、スマートフォンもない時代の話だ。

 ダイエーの城島健司氏、巨人の高橋由伸氏らが「勝った!」「負けた…」と一喜一憂する輪から少し離れて、ぽつんと相川氏が座っていた。

 「ベイスターズの結果気にならないの?」と聞くと、相川氏は「それは気になりますけど僕は立場が違うんで…」という。

 「城島はチームに戻っても居場所があるけど、僕は横浜でレギュラー獲ったわけじゃない。戻ってもポジションは保証されてませんから」

 真顔で答える若き相川氏の真摯な姿を見て感銘を受けた。チームの主力で、長嶋茂雄監督(当時)から日本代表での4番指名を受けた同い年の城島氏と自分の立場の違いをはっきりと言語化する相川氏は、きっと捕手として大成するだろう、もしくはそれ以上も…と思った。

 城島氏は正捕手で4番、捕手は2人体制で、相川氏はブルペン捕手から用具係まですべてをこなし、チームに欠かせない存在として銅メダル獲得に貢献した。陰のMVPと言っていい活躍だった。

 その後、横浜の正捕手になり、ヤクルト、巨人で活躍した相川氏と現場で再び交わることはなかったが、いつか監督になるんだろうな。イタリアで感じたその予感が、いよいよ現実になろうとしている。
 

続きを表示

「長嶋茂雄」特集記事

「始球式」特集記事

野球の2025年10月18日のニュース