どんな質問もフランクに応じ、名前の通り〝優男〟だった高橋。言葉の節々に故郷への愛情と音楽家としての使命感を感じた=東京・六本木 力強い歌声とストレートな歌詞で聴く者を虜にするシンガー・ソングライター、高橋優(41)。メジャーデビュー15周年を迎え、10日に記念のベストアルバム「自由悟然」を発売。誕生日の26日には故郷、秋田県から全国ツアーをスタートさせる。時代や社会に対する自身の思いに真っすぐ向き合って15年。表現者としてブレることなく突き進むナイスミドルに迫った。(ペン・納村悦子、カメラ・長尾みなみ)
飾らない真っすぐな人間性と、その時々の感情を具現化した楽曲から〝リアルタイム・シンガーソングライター〟として幅広い世代から共感を得てきた。「いろいろありましたが15年。意外とあっという間でしたね」とおちゃめに笑った。
ベスト盤は「自由悟燃」と書いて「じゅうごねん」と読む。〝混沌の時代にもがきながらも是非を見極め、然るべき自由を求め唄い続けた15年〟という意味を込めた同作は、インディーズ時代の楽曲からデビュー曲「素晴らしき日常」、代表曲「明日はきっといい日になる」、新曲「未刊の行進」「黎明」まで45曲を3枚のCDに収めた。「今までの楽曲の集大成。ライブをかなり意識した選曲になっています」と胸を張る。
誕生日の26日からは全国28カ所30公演を巡る記念ツアーを開催。「メインディッシュのフルコースのような15年の歴史を網羅した選曲になっています」と説明した。
節目を迎えた今年は「後厄だったんですよね」とポツリ。「声帯炎になって(2月からの)ツアーで初めて1本(公演を)飛ばした。急にコンクリートが上から目の前に落ちてきたり、男の子たちが持っていたパネルが僕の頭に当たって流血事件になったり…」とサラリと明かして驚かせた。
民謡歌手の父親の影響を受け、音楽が身近にある環境で育った。「僕の家は山に囲まれていて、よくギターを持って山に登って歌っていた。最初の路上ライブのお客さんはタヌキだったんですよね」としみじみ。
札幌の大学への進学と同時に路上での弾き語りを始め、本格的に音楽活動をスタート。だが、生計を立てるためにアルバイトをしたり、CD制作のために食費を削るなどもがいた時期もあった。
「お金を切り詰めた結果、食費を浮かすしかないとティッシュを食べたり。100均で6束入ったそうめんだけを食べて生き延びる。死に物狂いでした」と告白。
スカウトを機に2008年に活動拠点を東京へ移し、10年にシングル「素晴らしき日常」でメジャーデビュー。13年には初の東京・日本武道館公演を開催し、17年にはアニメ映画「クレヨンしんちゃん 襲来!!宇宙人シリリ」の主題歌「ロードムービー」やテレビ朝日系「熱闘甲子園」のテーマ曲「虹」を手掛けるなど音楽シーンの第一線で活躍してきた。