中国政府は19日、日本政府に日本産水産物の輸入再開手続きの見合わせを通知し、輸入を事実上、停止した。高市早苗首相の台湾有事を巡る国会答弁に反発した対抗措置とみられる。中国は東京電力福島第1原発処理水の海洋放出を受け、2023年8月に水産物輸入を全面停止。今月上旬になって日本産ホタテの対中輸出の再開が確認されていた。
毛寧報道官「中国に日本水産品の市場なし」
中国側は福島など10都県を除く水産物輸入の再開条件として、日本側の関連施設登録や放射性物質の検査証明書提出などを要求している。今回、日本側に書類の受け付けを停止すると通知した。
中国外務省の毛寧報道官は19日の記者会見で、日本側が輸入再開の条件として約束していた「技術的な資料を提供していない」と主張。首相の国会答弁が「中国民衆の強い怒りを招いた」とした上で、「現在の情勢下で日本の水産品を中国に輸出したとしても、市場はないだろう」と述べた。
木原稔官房長官は19日の会見で「中国政府から(輸入停止の)連絡を受けた事実はない」としながらも、「申請中の輸出関連施設の速やかな再登録を含む輸出円滑化を働きかけていく」と述べた。輸入再開手続きを巡っては、申請した697施設のうち輸出が認められたのはわずか3施設で、中国側の運用が恣意的だとの指摘も出ていた。
国連では「日本に安保理常任理事国の資格なし」
一方、中国の傅聡国連大使は18日、米ニューヨークの国連総会の安全保障理事会改革を協議する会合で、日本は「安保理常任理事国入りを求める資格はない」と発言した。
中国国連代表部の発表などによると、傅氏は首相答弁について「台湾海峡問題に武力介入することをほのめかした」と主張。「極めて危険だ」とし、「国際正義に対する挑発で、戦後の国際秩序の破壊だ」と日本批判を展開した。
日本の代表は反論権を行使し、日本は「世界の平和と繁栄に貢献してきた」と反発。傅氏はこれを受けてさらに発言し「台湾問題で火遊びをするな。一切の結果は日本が負うことになる」と報復措置を示唆した。中国は、日本への直接的な圧力だけでなく、国際社会でも対日批判を行って孤立させる狙いとみられる。
沖縄の日本帰属も疑問視
また、中国共産党機関紙、人民日報系の環球時報は19日付の社説で、「琉球諸島の主権の帰属は歴史的、法的な議論が存在している」と主張し、沖縄の日本帰属を疑問視した。(中村智隆、北京 三塚聖平)




