米アンソロピック 創業者アモデイ氏は「安全なAI」の伝道師
ダリオ・アモデイ氏が2020年に米オープンAIを退社した時、同社のサム・アルトマン最高経営責任者(CEO)はその成功を祈った。アモデイ氏が妹のダニエラ氏や他の退職メンバーが温めていたプロジェクトが、おそらく「製品開発よりも研究に焦点を合わせた」ものになると見込んでいた。 アルトマン氏は当時、ブログで「今後もずっと協力していけることを楽しみにしている」とつづっていた。 だが今、アルトマン氏らにとっ
ドリスコル米陸軍長官、国防長官の座も狙う異例のウクライナ「特使」
11月27日の感謝祭にあわせた休暇のために米国の首都ワシントンが空っぽになる中、トランプ大統領2期目で最も重大な外交ミッションに突如、投入されたダン・ドリスコル米陸軍長官は欧州と中東を飛び回っていた。米陸軍の若き文官トップが身を置くには意外な役回りともいえる。政権にとって大きな賭けとなる重要な和平交渉において、トランプ氏はバンス副大統領の親密な友人であるドリスコル氏に、ロシア政府とともに作成した
トランプ氏の娘婿クシュナー氏、ウクライナ和平でも担う仲介役
11月23日、スイス・ジュネーブの殺風景な会議室では、戦闘を終結させるための協議が行われていた。痛みの伴う譲歩を議論するなかで、ウクライナ代表団の目を引いたのは、猛烈な勢いでノートパソコンのキーボードをたたく米国代表団のメンバーだ。 「最初はジャレッド(・クシュナー氏)の姿を見て少し驚いたが、すぐに好感に変わった」。参加していたウクライナ代表団の一人、キスリツァ外務次官は話す。トランプ米大統領の
パリに常設店開設のSHEIN、創業者は従業員にも謎の人物
ネット通販業界の片隅から身を起こしてきたSHEIN(シーイン)にとって、世界のファッションの中心地パリにある有名百貨店に常設店舗を開設するのは勝利の証しとなるはずだった。 ところが、フランスでは最近、中国発のファストファッション通販業者であるシーインに抗議する街頭デモが繰り広げられているほか、仏政府の旗振りで国内での営業を阻止しようとする動きが広がっている。さらに、同社の通販サイトで出店者がマチ
日本の「鉄の女」高市早苗首相、政界を驚かせるか
1990年初頭の短い映像だ。かっちりとしたスーツ姿の若き高市早苗氏がリムジンの後部座席に座り、国会議事堂を通り過ぎる。東京の高層ビルのオフィスでダンベルを持ち上げる。他の人が立ち止まる中、高市氏が勢いよくエスカレーターを駆け上がる――。 「『これや』という、やるべきことが見つかったような気がした」。未来の首相は、米国の女性議員の下でインターンをしていた時に目覚めた政治への思いを語った。「米国の国
NVIDIAのCEOが世界のAIセールスマンになるまで(下)
人工知能(AI)に関する国家主導の取引には、民間投資の呼び込みを図る官民パートナーシップ(PPP)が絡んでいる。 例えば、1月に米ホワイトハウスの大統領執務室で発表された5000億ドル(約75兆円)規模のAIインフラ計画「スターゲート」は、米オープンAIや米オラクル、アラブ首長国連邦(UAE)の投資会社MGX、英半導体設計大手アームを傘下に持つソフトバンクグループ(SBG)が主導した。 2月には
NVIDIAのCEOが世界のAIセールスマンになるまで(上)
米半導体大手エヌビディアのジェンスン・ファン最高経営責任者(CEO)は9月17日、英ロンドン郊外のウィンザー城でチャールズ英国王やトランプ米大統領と共に国賓晩さん会に出席した翌日、ロンドン中心部でパーティーを開いた。 数百人のテック起業家やベンチャーキャピタリストを前に、ファン氏はラトニック米商務長官、スターマー英首相とともに登壇。スターマー氏は「我々の取り組みに信頼を寄せてくれたファン氏に、大
孤立深めるバイル仏首相、危険な信任投票に賭ける
8月、パリ市民が一斉に恒例の夏休みを郊外で過ごすなか、フランスのバイル首相(74)は静まり返った首相官邸マティニョンにとどまり、執務を続けていた。 国家債務という「ヒマラヤ」に挑む 不安定な少数与党を率いるベテラン中道派のバイル氏は、怠惰を嫌うことで知られる。その性格は、ピレネー山脈の麓で農家の息子として育った幼少期に由来すると言われる。いま同氏は、別の山の頂を目指している。国家債務という「ヒマ
クックFRB理事、政権と法廷で対決へ 論争恐れぬ異色の経歴
米連邦準備理事会(FRB)で初の黒人女性理事であるリサ・クック氏は戦うことには慣れている。眉と脚の傷痕がその証しだ。 米ジョージア州の小さな田舎町で育ったクック氏は人種差別撤廃に向け、異なる人種の子どもが共に学べるよう学区外の学校に通えるようなった際、白人の子どもに殴られたと振り返る。 「それが(単なる子どものけんかではなく)人種差別に絡んだことだとわかったのは、その白人の子が私に黒人を侮辱する
インテルのリップブー・タンCEO 再建への険しい道
米国の多くの企業経営者にとって、当面の最優先課題は単純だ。ドナルド・トランプ大統領の機嫌を損ねないことだ。 「国の最高経営者たる大統領の機嫌を取る必要があるのか」と疑っていた人も、半導体大手インテルのリップブー・タンCEOの一件で、その現実を突きつけられた。1週間前、トランプ大統領から辞任を迫られた。同様の目に遭った米企業経営者の中でも、タン氏は不名誉にも最も著名な人物となった。 問題視された中