FIFA、W杯のチケット価格でオウンゴール(社説)
国際サッカー連盟(FIFA)は米国、カナダ、メキシコが舞台となる2026年男子ワールドカップ(W杯)の出場枠を32から48チームへ拡大した。この決定はインファンティノ会長によって、「美しいゲーム」と呼ばれるサッカーがその国際的なブランドの本領を発揮する機会として提案された。だが、FIFAが11日、チケットの公開抽選を開始して価格表を明らかにしたところ、今回大会は万人に開かれた世界共通の祭典ではな
EU単一市場をうまく機能させるにはどうすべきか(社説)
欧州連合(EU)の単一市場はEUの王冠の宝石と呼ばれている。単一通貨とパスポートなしで自由に移動できるシェンゲン圏と並び、単一市場は主権を共有しようとする歴史上最も重要な自主的努力の一つを象徴している。 ところが状況は芳しくない。フィナンシャル・タイムズ(FT)の一連の記事が明らかにしているように、各国市場の統合はサービス分野ではなかなか達成されず、製品分野では不完全で、多くの意味で進展するどこ
日本と中国の無用な対立(社説)
中国の「戦狼外交」の基準に照らしても、先ごろの中国側の発言は度を越していた。「勝手に突っ込んできたその汚い首は一瞬のちゅうちょもなく斬ってやるしかない」。中国の薛剣・駐大阪総領事は11月初めにSNSにこう投稿した。矛先が向かったのは、仮に中国が台湾を攻撃した場合、日本は軍事的な関与を検討する可能性があると発言した高市早苗首相だ。 その後、投稿は削除されたが、中国側の威圧はいっそう強まっている。日
英政権、苦肉の予算案 寄せ集め「ハッチポッチ」の税収確保(社説)
英労働党は「経済の安定」をもたらすことを公約に掲げ、政権を奪取した。だが26日に公表する予算案の準備は、さらなる混乱と不確実性をもたらす方法の典型例になっている。 リーブス財務相は4日朝の演説で、財政に余裕をもたせるために主要財源の増税を実施しない、という党の公約を破る構えを示した。このニュースは、英国の財政不安への懸念を強めていた金融市場を落ち着かせた。ところが14日、リーブス氏は方針を転換し
プライベートクレジット市場に鳴る警鐘(社説)
活況を呈するプライベートクレジット(ファンドなどノンバンクによる融資)業界からは、次々と市場に警鐘を鳴らす言葉が生まれている。市場関係者は、世界で3兆ドル(約460兆円)規模に成長したプライベートクレジットを「時限爆弾」に例えたこともあった。そこに直近の動揺によって彩り豊かな言葉が加わっている。 ともにノンバンクの金融機関から融資を受けていた米自動車部品メーカーのファースト・ブランズ・グループと
サヘル地域、イスラム過激主義とロシアの危険な融合(社説)
西アフリカ・マリの軍事政権は3年前、フランス軍を撤退に追い込んだ。この旧宗主国に対する侮辱的な行為は多くの国民から称賛を集めた。フランスに代わって現れたのは、軍政の保護と容易に屈しないイスラム反政府勢力の掃討を約束するロシアの傭兵(ようへい)だった。現在、国際テロ組織アルカイダ系の「イスラム・ムスリムの支援団(JNIM)」が首都バマコを包囲し、燃料供給を遮断するなか、さらなるクーデターもうわささ
中国の「レアアース資源外交」にどう対抗するか(社説)
西側諸国との緊張が高まるなか、中国はレアアース(希土類)を政治的な交渉の道具として使う姿勢を一段と鮮明にしている。2025年に入ってから相次いで輸出規制を打ち出し、スマートフォンから電気自動車(EV)、軍需品に至るまで、中国産レアアースに依存する世界の製造業に衝撃を与えた。代替手段はいまだ乏しい。中国は世界のレアアース採掘量の66%、精製量の88%を握っている。 10月30日に行われたトランプ米
米地方選、民主党圧勝の背景に生活費危機(社説)
4日に行われた米国の地方選挙での民主党圧勝の最も際立つ特徴は、それぞれの勝利の背景に大きな違いがあることだ。バージニア州農村部のブルーカラー労働者が多い郡部からニューヨーク市郊外の労働者階級の地区まで、針は一様にトランプ大統領の共和党と反対の方向に振れた。候補者が民主党中道派でも「民主社会主義者」でも、結果は同じだった。前者は新たなバージニア州知事となった元米中央情報局(CIA)職員のアビゲイル
新たな核軍拡競争の時代、冷戦期の枠組み崩壊(社説)
トランプ米大統領は10月末、ロシアや中国と「対等な立場で」核兵器の試験を再開すると述べた。中国とロシアの意表をつく発言だったが、米政権内でも同じように驚きが広がった。核弾頭実験を再開すれば、核大国が30年にわたって続けてきた核実験のモラトリアム(一時停止)から離脱することになる。冷戦時代の軍備管理の枠組みがほぼ崩壊している今、ロシアのプーチン大統領が2つの核兵器運搬システムをアピールした直後に飛
一時休戦となった米中貿易戦争(社説)
トランプ米大統領は何事においても決して控えめではない。貿易問題について協議した中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席との10月30日の会談について、トランプ氏は10段階評価で「12点」だと胸を張った。中国側の説明はもっと慎重だったが、具体的な点で異論を唱えることはなかった。明らかなのは、両首脳が6年ぶりの会談で休戦に合意し、2大経済大国の貿易戦争が激化する事態は当面の間回避されたということだ。胸