FIFA、W杯のチケット価格でオウンゴール(社説)
国際サッカー連盟(FIFA)は米国、カナダ、メキシコが舞台となる2026年男子ワールドカップ(W杯)の出場枠を32から48チームへ拡大した。この決定はインファンティノ会長によって、「美しいゲーム」と呼ばれるサッカーがその国際的なブランドの本領を発揮する機会として提案された。だが、FIFAが11日、チケットの公開抽選を開始して価格表を明らかにしたところ、今回大会は万人に開かれた世界共通の祭典ではな
銀は「新たな金」か ジリアン・テット
ドイツの財務省は10月、異例の措置に出た。 随分前から発行が計画されていた、聖書に登場する「東方の三博士」を描いた25ユーロ硬貨のクリスマス記念銀貨の発行を中止した。さらに(祝祭感は薄いが)ドイツ西部ブッパータールのつり下げ式モノレール開通125周年を祝う銀貨20ユーロの発行も取りやめた。 なぜか――。銀(シルバー)の価格が10月に1トロイオンス53ドル(約8230円)に急騰したためだ。独財務省
世界がステーブルコインを懸念すべき理由 マーティン・ウルフ
数カ月前、筆者の息子の舅(しゅうと)が米ニューヨーク州から英イングランドに住む家族に結構な金額を送金した。ところが着金しなかったうえ、何が起こったのかを知ることもできなかった。送金した銀行が中継銀行に照会したものの、英主要銀行の一つに数えられる受取銀行が問い合わせに答えないという。 筆者が同僚に意見を聞いたところ、マネーロンダリング(資金洗浄)に関連して答えないのかもしれないと言われた。舅は不安
トランプ氏の危険なベネズエラ政権転覆の試み エドワード・ルース
この革命はテレビ放映されることはなく、ミーム(インターネット上のコンテンツの広がり)を通じて伝えられるだろう。 トランプ米大統領がベネズエラのニコラス・マドゥロ政権の打倒を決断するかどうか、間もなく明らかになりそうだ。ベネズエラへのトランプ氏の対応は一見、場当たり的に見えるものの、その執着ぶりに彼の外交政策が凝縮されている。 トランプ氏は、米国内の支持者に向けに政治的アピール材料としてベネズエラ
財政と金融のリスクに響く警報音 マーティン・ウルフ
世界金融危機に先立つ2007年から09年にかけて、世界各国の中央銀行が参加する国際決済銀行(BIS)は世界中の金融当局から嫌われていた。緩和的な金融政策や行き過ぎたレバレッジ(借り入れの活用)、高水準の資産価格、透明性の欠如がリスクを生み出していると指摘したからだ。しかしBISのこうした警告は無視された。その結果発生した悲惨な世界金融危機は深刻な景気後退をもたらしただけではなく、高水準の公的債務
米の新安保戦略で2つの「西洋」浮き彫り ギデオン・ラックマン
トランプ米政権が5日までにまとめた新たな「国家安全保障戦略(NSS)」は、欧州で酷評されている。とはいえ実に興味深い内容だ。 というのも国家安全保障を文明という観点から再定義する、という極めて野心的な試みをしているからだ。 従来の安保戦略は、軍事面および経済面の必要性を中心に据えてきた。米国の新たな安保戦略は、これらの課題を義務のように一通り論じているが、そこに執筆者の熱意は感じられない。 台
政府が虎視眈々と狙う国民の「貯金箱」
国はあなたを必要としている。より正確には、あなたのお金を必要としている。今後数年間のうちに何らかの形で、あなたの資産に触手を伸ばしてくるだろう。 小国ルクセンブルクがその先駆けとなるかもしれない。同国政府は10月、防衛債の発行計画の概要を打ち出した。21世紀の欧州で初めてとなる画期的な取り組みだと位置づけられている。この計画が承認されれば、2026年にも最初の防衛債が発行される見通しだ。 ルクセ
分断進む世界経済、鍵は米中どちらが愚行やめるか マーティン・ウルフ
世界経済はこの先どうなるのか――。「既に分断し始めている」というのが現実味のある答えの1つだ。 英調査会社キャピタル・エコノミクスで主席エコノミストを務めるニール・シアリング氏は、洞察に富んだ近著「The Fractured Age(分裂の時代)」でそう論じている。そして「分断」は「脱グローバル化」とは違うと指摘する。 貿易や他のグローバル化の形態はさほど縮小しないかもしれない。その点は1930
インフルエンサー経済、ファンが支える巨大なエコシステム(Lex)
スタントマン、95歳の祖母、サイレント喜劇俳優には、自力で富を築いたことを除けば共通点はほとんどない。この3人はインフルエンサー経済の一部だ。これはオンラインコンテンツの制作者、ソーシャルメディアを運営するプラットフォーマー、広告代理店、データ分析企業が共有するエコシステムで、米ゴールドマン・サックスは2027年までにその価値が5000億ドル(約78兆円)に迫ると推定している。 オンラインコンテ
住宅危機に直面するZ世代、仮想通貨と「金融ニヒリズム」に走る
若者が年長者から「怠け者」や「無責任」といったレッテルを貼られるのは、どの時代にも見られる通過儀礼のようなものだ。しかし、1990年代後半〜2010年ごろに生まれた「Z世代」はとりわけひどい扱いを受けてきた。仕事で努力しない、ぜいたく品に浪費する、暗号資産(仮想通貨)やNFT(非代替性トークン)のようなリスク投資に「YOLO」(You only live once=人生は一度きり)の精神でのめり