1879年に大阪で第1号を発行した朝日新聞でしたが、9年後の88年7月に東京で別の新聞社を買収し「東京朝日新聞」を創刊したこともあって、翌89年1月には大阪で発行していた「朝日新聞」を「大阪朝日新聞」と改めました。

 しばらくの間、「大阪朝日新聞」、「東京朝日新聞」と二つの題字の新聞が発行されていましたが、1940年9月1日に再びどちらも「朝日新聞」に統一されました。

 その背景には東京、大阪だけでなく九州、名古屋の各社も発展し独立性が強まったために、各社がばらばらにならないように、編集会議で一貫した方針を決める体制に改め、一つの理念で全社を運営しようとする意図がありました。

 40年の8月におこなわれた大規模な機構改革で東京、大阪、西部、中部の4本社制も確立し題字も統一することが決められました。現在まで続く朝日新聞の仕組みはこの時に整備されたようです。

 その題字ですが、ほかではあまり目にしない、独特の書体ですね。これは中国の唐の時代、四大書家の1人である欧陽詢(おうよう・じゅん)の「大唐宗聖観記」という碑の拓本から文字を集めてデザインしたものです。

朝日新聞の2種類の題字の写真。左が大阪で発行される背景がアシ、右が東京で発行される背景がサクラのもの

 ただし、「新」の字がその拓本の中になかったために、「親」と「柝」から部分を取り出し、組み合わせて作りました。パソコンなどで登録されていない文字を使う際に行う作字と同じことが当時から行われていたんですね。

 様々な変遷がありながら、創刊時からコンピューターで制作されるようになった現在に至るまで、基本的に同じ形の題字、一度ゆっくり眺めてみてください。

 ※題字の背景が2種類ある理由については、小史ストーリーズ(1)をご覧ください。

朝日新聞オリジナルキャラクターで、白い付け髭を付けた黒猫のマダニャイが付け髭に手を当てているイラスト

 マダニャイ
(朝日新聞オリジナルキャラクター)

 夏目漱石著「吾輩は猫である」の有名な書き出しからつけられた。
「吾輩は猫である。名前はまだ無い。どこで生れたかとんと見当がつかぬ」
 年齢は不明だが、こう見えて子猫である。
 文学、とくに夏目漱石の作品が大好き。文豪に憧れていて、実はつけひげである。
 好物はサバ缶。

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