多様な視点、届けるために 朝日新聞社ジェンダー平等宣言3年

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 ■gender equality 朝日新聞×SDGs

 朝日新聞社が報道や事業、その担い手の多様性の実現を目指すジェンダー平等宣言を発表して3年がたちました。女性リーダー育成のため社外の専門家に助言を仰ぎ、ジェンダー平等宣言+(プラス)を定めるなど、新たな取り組みも始めました。今後も挑戦を続けます。

 ■女性リーダー育成へ「観察学習」を 上司の意思決定、「体験」する機会増やして 高田朝子さん

 朝日新聞社は2022年10月、部門別の女性登用の数値目標など女性リーダーを育成するための新たな目標や指標を掲げました。なぜ女性リーダーの育成が必要なのでしょうか。なぜ女性登用が進まないのでしょうか。本社の社長に対する助言役である再成長アドバイザーの法政大学経営大学院教授・高田朝子さんに聞きました。

     ◇

 ――女性登用の促進はなぜ必要なのでしょうか。

 大事な点は、日本は人口が減っているということです。日本の産業の良さである「丁寧である」とか「製品が壊れにくい」という質を担保しようとすると、人手がまるで足りません。

 人手が足りない時にできることは三つしかないと考えています。

 一つは、出生数を上げること。しかし産みたくても産めない人もいれば、産まない権利もあり、コントロールが非常に難しいです。

 二つ目は、外国から来てもらうことです。少なくとも新型コロナウイルスの感染拡大前までは、ある程度機能していたと思います。しかし、コロナに円安が重なり、日本で働くメリットが少なくなりました。

 三つ目が、高齢者と女性です。30年前と比べて、大学への進学率の男女差はかなり縮まりました。男性と変わらない教育を受けてきた女性が活躍しないのは、経営者の視点から見て、とてももったいないと思います。

 ――女性リーダーの育成を阻むものはなんでしょうか。

 日本で働く人の男女の数はほぼ同じくらいです。しかし女性管理職の割合は非常に少ないのが現状で、「上司は男性である」という固定観念は依然としてあります。

 マネジメントの根幹は意思決定です。管理職は「決める」ことが大事な仕事ですが、意思決定するには訓練が必要です。上司がどのように意思決定しているか観察学習をすることで経験を積みます。ですが、飲み会や喫煙所、接待などでは、男性の上司と部下が一緒に過ごす機会が多い。上司が決めるために考え、悩む場面に居合わせたり見聞きしたりする機会が女性には圧倒的に少ないのです。

 ――私は3カ月、役員の後ろについて仕事ぶりを学ぶジョブシャドーイング研修を受けました。高田さんの発案だそうですね。

 普段から上司の振る舞いを観察する機会が多い男性より、観察学習の場が足りない女性にこそ機会を与えるべきだと考えます。まだ管理職の女性は「珍しい」存在。珍しい立場の人は、つらい思いをすることもあると思います。

 「こんな大変な思いを子育て中の女性にさせるのはかわいそう」と考え、大事な仕事を任せない上司もいるでしょう。しかし、本人の意向も聞かずに判断すべきではありません。女性側も「私でいいのか」と自信を持てない方もいるかもしれません。経験を積み、成功体験を重ねることで、その思いは解消されると思います。

 ――リーダーになりたい女性をどう育てたらいいでしょうか。

 日本では、これから組織の規模が急成長する産業は少ないと思います。そうなると社員が固定化する可能性が高い。社内でも社外でも、人とたくさん触れあえるネットワークをつくるべきです。直属の上司のようなキャリアを目指したいとは思えなくても、ネットワークの中に楽しそうにキャリアを積んでいる人がいれば、観察学習したり、話を聞きに行ったりできます。会社も社員のネットワークづくりを支援すべきでしょう。

 目に見える情報で人は判断するので、見渡した時に上司がみな男性だと「男性で世の中が回っている」という誤った刷り込みがなされてしまう。今の新入社員の世代は親が共働きの家庭が多く、男女ともに働くのが初期値になっています。だからこそ、今は過渡期。数値目標を作ってでも男性と女性のリーダーが半分半分に近い風景をつくりだす必要があるのです。朝日新聞には期待しています。

 (聞き手・阿部朋美)

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 たかだ・あさこ 1964年生まれ。福岡県出身。モルガン・スタンレー証券、法政大学経営大学院イノベーション・マネジメント研究科准教授などを経て2011年から同研究科教授。慶応大学経営学博士。専門は組織とリーダーシップ。イオンディライト社外取締役。22年4月、朝日新聞社の再成長アドバイザーに就任し、女性リーダー育成について提言や指導をしている。

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 あべ・ともみ メディア事業本部CDPソリューション部主査。1984年生まれ。2007年入社。地方勤務を経て、東京本社社会部で警視庁などを担当。産休、育休を経験し、22年から顧客データの管理や活用に携わる。

 ■男性中心の文化・無意識の偏見、自ら変革 朝日新聞社代表取締役社長・中村史郎

 「ジェンダー平等宣言」から3年。社内の意識改革が進んできた一方、数値目標の重みを感じています。昨年秋にはより多くの女性が社内の意思決定過程に参画することを目指して「ジェンダー平等宣言+(プラス)」を公表し、「女性のいない会議をつくらない」という新しい目標を掲げました。当社の再成長アドバイザーである高田朝子さんの発案です。

 昨年12月に始めた「ジョブシャドーイング研修」も、高田さんからいただいたアイデアのひとつ。将来の管理職候補となる若手女性社員が影のようになって役員と一緒に行動し、意思決定や組織運営を学びます。30代の女性3人が第1期生として取り組みました。

 女性登用には、女性を特別扱いするのか、男女平等に反しないか、といった一見もっともらしい意見もあります。しかし、そもそも男女に能力差はないはず。それなのに多くの組織で役職が上になるほど女性が少ない。この現実を変えていくのは私たちの役目です。

 男性中心の組織であることがまだ圧倒的に多いメディア企業には、組織文化や無意識の偏見を自ら変革することが求められています。意思決定の場に多様性を確保することは、多様な意見や視点を読者に届ける上で欠かせないことだと考えています。

 ■ジェンダー平等宣言(骨子)

 1.朝日新聞の朝刊に掲載する「ひと」欄に登場する人物は、年間を通じて男女どちらの性も40%を下回らないことをめざす。

 2.「朝日地球会議」をはじめとする主要な主催シンポジウムの登壇者は、男女どちらの性も40%を下回らないことをめざす。

 3.管理職に占める女性比率を2020年の約12%から少なくとも倍増させることをめざす。男性の育休取得率を向上させる。

 4.ジェンダー平等に関する社内の研修や勉強会を定期的に開催する。

 5.ジェンダー平等に関する報道をまとめた冊子を定期的につくる。

 6.宣言の達成度を定期的に点検、公表する。

 ■ジェンダー平等宣言+(骨子)

 目標1.女性のいない会議をつくらない

 目標2.部門別に女性登用の数値目標を設けて達成する

 指標1.全社の部門をまたぐ会議の参加者の女性比率

 指標2.部門別・職位別の女性比率

 指標3.年収の男女比較

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