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INTERVIEW

Japanese

2026年04月号掲載

FINLANDS

Member:塩入 冬湖

Interviewer:石角 友香

これまでの人生で獲得してきた諦めたくない思いを従来になく抜け感のあるサウンドに落とし込んだアルバム『HAS』に続く、FINLANDSのニューEP『しょせんの二人』が到着。すでにツアーで披露している楽曲と、未発表のタイトル・チューンも含む4曲は塩入冬湖のこれまでの人生の様々な側面を今のFINLANDSサウンドで表現しつつ、これからこのバンドに出会う人も素直に飲み込める普遍性も湛えている。何度目かのターニング・ポイントにある塩入に話を訊いた。

-"SXSW 2026"から帰って来られたばかりですよね(※取材日は3月中旬)。どうでしたか?

楽しかったし幻みたいな時間でしたね。昼と夜の感覚がなくなるというか、出番も遅いんですよ。出番が夜10時過ぎぐらいだったんですけど、終わってからも街中大騒ぎしてるので、本当に夜中の2時かな? みたいな感覚が非現実的でした。

-FINLANDSにとってどういう経験になったと思いますか?

一言でいえば強くなったというか、メンバーの意識は結構育ったなと思いますね。これは行く前から言われてましたし、まぁそうだろうなと思ってましたけど、自分の身体とギターがあればどうにかなるというか(笑)。本当その通りだなと思える経験でしたね。

-EPのお話の前に、アルバム『HAS』(2025年リリース)は塩入さんが人生で得てきたものという根拠がしっかりある上で、強くて明るい、すごく抜けがいいアルバムでした。

そうですね。自分自身、1年以上経った今でもすごく気に入っている作品です。

-『HAS』をリリースしてからツアーを回って、どんなことを感じましたか?

いい意味で今のFINLANDSにすごく満足してるなと感じましたね。ある程度はまぁいいよって思うことが近年わりと多かったんですけど、『HAS』も昨年のツアーも、ここは絶対にこうしたいとかそれは絶対に嫌だなと思うことは結構突き通したなと思うんです。だから自分の意思をもうちょっと信じてよかったんだなということを再確認できるアルバムでありツアーだったと思うので、そういうところを含めて満足してるなと思いました。

-ツアーの中ですでに今回のEP収録の新曲は演奏されていましたが、つまりツアー中に作っていたということですか。

そうですね。でもそれはすごく意図的で。ここ10年近くでリリースの形態が変わったと思うんですよ。CDをリリースすることが主な目的で、プラス配信もあるっていうのが10年前ぐらいからの認識だと思うんですけど、そういうときって新曲をパッケージしてリリースをして、ツアーで新曲をやるって流れが多くて。でも私が高校生のバンド始めたての頃や、FINLANDS始めてちょっとぐらいまでって、ライヴでいっぱい新曲をやって、その新曲がやっとパッケージングされてリリースされて、それを買って聴くのがすごく楽しみだったなってことを思い出したんです。ライヴで楽曲を育ててリリースして、やっと皆さんが自分の持ってる機器で聴けるようになるっていうのをしたい、そこに戻したいなとすごく思って。だからツアー中に新曲をいっぱい作って、それがリリースできるかできないかは別としてライヴでやることは自由なので、それをツアー中に育てていくことで、楽曲のリリースをお客さんが楽しみにしてくれればいいなぁという気持ちでいっぱい作ってたんですよ。

-なるほど。では各々の楽曲についてお聞きしていきたいんですけど、まず「COME」はイントロから"やったるで!"っていうエネルギーを感じました。

エネルギッシュですね、すごく。

-この曲ができた経緯を改めて聞かせていただけますか。

こういうビートの曲を作りたいという気持ちがあって、珍しくドラムから作ったんですけど、形になりかけたぐらいのときにちょうどツアーがあって。ここ何年かはライヴが終わってホテルに帰ったら、自分の安心できる時間みたいな感じでその日の野球の見逃し配信を観るんです。そのときちょうどカープ(広島東洋カープ)対巨人(読売ジャイアンツ)戦で、その日の巨人の先発の戸郷(翔征)投手の調子がめちゃくちゃ悪くて。でも調子が悪い選手程カメラに抜かれるんですよね。もう見てられなくて。一昨年の戸郷選手ってすごく調子が良くて、私はカープを応援しているんですけど、"今日、戸郷選手か、無理だな"って思うぐらいすごかったんですよ。それがその日は1回で5~6点取られてて。で、今までできてたことが急に一切できなくなる恐怖をめちゃくちゃ思い出したんです。

-はい。

私もFINLANDSを始めたばかりのときに急に全部が怖くなって、今までできてたことが一個もできなくなる時期があって。ご飯もちゃんと食べられなくなったし、スタジオに行くんだけど今まで覚えてた歌詞も全然出てこない。ギターもできてたことが一つもできなくなったんです。FINLANDSの環境が目まぐるしく変わっている時期ではあったので、そういうことに起因してたんでしょうね。そのときに、普段そういう話は母親にはしないんですけど、"なんかいろんなことがもうできなくなっちゃったんだよね"って話をしたら、"人間、賢くなってくるといろんなことが理解できるようになって、分かるからこそ怖くなっちゃったんじゃないか"って返されて、たしかに! と思ったんですよ。自分が大人になったからこそ、いろんなことが怖くなっちゃったんですね。その試合を観ていてそのことをすごく思い出して、今までできてたことができなくなる恐怖に人はいつでも晒される可能性があるんだなってことを改めて感じました。それで、今私が作っている曲ってそういうことが言いたいんだなって思って、その場で「COME」の歌詞を全部書いたんです。

-そんな経緯があったんですね。

MCとかこの歌詞の中でも言ってますけど、結局自分のことを救えるのは自分だけだってずっと思ってるんですね。救われようとしなければ誰も救ってくれないし、私のことを救ってくださいって言うだけとか、例えば私が何もできなかったときに母親に話をしたみたいな、あれも自分から救いを求めたうちに入るんじゃないかって。だから助かりたいんだったら誰かに助けを求める、自分から救われに行かないと誰も助けてくれないということを歌にしたかった。救いっていうものがすごくテーマになってる曲なんです。

-自分で自分を救うことは、自分の殻に閉じこもることではないと。

そうですね。だからFINLANDSのライヴに来てくれることも、救われようとしてる行動に入ると思うんですよ。家にずっといると嫌なことばっかり考えちゃったりするじゃないですか。でもたまたまライヴに行ったり、ただスタジオに入ったりでも私は救われることがよくあるんですよね。自分が心配してたことって全然そんな必要なかったんだなと思ったりするので、自分で何か行動を起こすだけでも救いになるんです。だからライヴで「COME」を聴いてくれる、ただそれだけでも救われる一手にはなるんじゃないかなと思います。

-そしてタイトル・チューンの「しょせんの二人」は、タイトルだけ見ると人生を共にしていくという意味とも捉えられそうですが、実際はもっと自分寄りっていうか。

「しょせんの二人」は夏休みの終わるちょっと前くらいをテーマに作ったんです。最初はリフを作りたくて、ギターで最初の"チャチャチャ"っていうところを実験的に家でずっとやってて。これは曲にならなくてもいいやという気持ちで作ってたんですけど、リフができてからはすぐに楽曲全部ができあがって。「ウィークエンド」(2016年リリースのフル・アルバム『PAPER』収録曲)とか「HEAT」(2021年リリースのフル・アルバム『FLASH』収録曲)とかもそうなんですけど、たまに記憶もあまりないままに曲ができあがってることがあって、これもそれぐらいすぐにできた曲です。で、この"しょせんの二人"って言葉も最初から決めてたんですよね。リフができた時点でこれは「しょせんの二人」っていう曲にしようと思って。で、歌詞もだいたい言葉が揃っていたのですぐ書けました。分かりやすくテーマで言うと、本当に夏休みの終わりちょっと前ぐらいの、"あぁもう楽しかった時間終わっちゃうな、ヤベぇな"っていう焦燥感をテーマにして作りましたね。