生徒が問題児だらけで、担任教師が次々に辞めていく季園女子高等学校の1年A組。「1年A組のモンスター」は、そんなクラスに新たに赴任してきた男性教師・自見太郎が、“モンスター”な生徒と、彼女らが巻き起こすさまざまな事件に、異常なほどの真面目さで教師として向き合っていく物語だ。月刊ComicREX(一迅社)で2018年1月に連載を開始した同作は、2026年3月に約8年2カ月の連載に幕を下ろし、5月27日には、最終16巻が発売された。
コミックナタリーでは、最終巻発売を記念して、著者の英貴にインタビュー。主人公の教師も“モンスター”だという異色の教師ものが生まれた経緯や、8年以上という長期連載だからこそ描けたものなどを、終盤は最終巻のネタバレも少し交えながら、たっぷりと語ってもらった。
取材・文 / 丸本大輔撮影 / 武田真和
「1年A組のモンスター」
季園女子高等学校に赴任してきた地味な風貌の教師・自見太郎。彼が受け持つことになった1年A組は“地獄”だと言われていた。わがままな生徒、依存してくる生徒、嘘つきな生徒、暴力的な生徒、権力者を親に持つ生徒……。そんなモンスターのような生徒たちに、自見は異常ともいえる“真面目さ”で対抗していく。
変な先生を描きたいというのがメイン
──2018年1月に連載がスタートした「1年A組のモンスター」の最終巻が5月27日に発売されます。約8年2カ月の長期連載作品が完結を迎えた心境を教えてください。
連載を立ち上げたときの打ち合わせでは、だいたい5巻くらいで終わる想定だったので、「まさかこんなに長くなるとは」と驚いています。それに何よりも読んでくださる方がいてこその約8年なので、「ありがとう」という気持ちが一番大きいです。
──全16巻と英貴さんのキャリアの中で最も長い作品になりました。達成感も大きいのでは?
どちらかといえば、ちゃんと最後までお届けできてよかったと安堵する気持ちのほうが強いかもしれません。ふわっとですが、最初の頃に終わり方や締めのセリフも決めていたので、やっとここまで来たという感じです。
──8年以上前の話になりますが、「1年A組のモンスター」という作品が生まれた経緯を教えてください。
もともと、私は複数の出版社さんで連載を掛け持ちさせていただいているのですが、いくつかのネタを作って、それらを各出版社さんにプレゼンして選んでいただくというやり方をすることが多いんです。当時、別の出版社さんの雑誌で教師ものをやりたいという話をしていたのですが、その媒体ではなかなかうまく話がまとまらなくて。そんなときに月刊ComicREX編集部の内野(健志)さんから声をかけていただいて。一迅社さんのほうが無茶できる……という言い方はよくないかもしれないんですけど(笑)。いろいろとチャレンジさせてもらえる印象があったので、内野さんに「こういう教師ものをやりたいんですけど」というお話をしました。
──その時点ですでに、かなり尖った教師ものだったということですか。
(主人公の)自見先生は性格も含めプロトタイプはできていて。(花中)桃ちゃんもその頃からあまり変わってないですね。ただ、自見先生のデザインだけが本当に決まらなくて。最初は、短髪で割ととさわやか系な普通の先生をイメージしていました。それが試行錯誤しているうちに、陰キャに寄せていった感じです。
──モンスター的な生徒を描くことより、教師を描くことのほうがメインの企画だったのですか?
はい。こういう変な先生を描きたいというのがメインです。生徒たちは、その先生を引き立てるために、どういう生徒を配置したらいいだろうと考えていきました。ただ、別の雑誌で考えていたときは、雑誌の方向性もあって、恋愛もので。陰キャで癖のある先生と周りの女の子が恋愛をしたらどうなるかという企画だったりしました。でも、一迅社さんだったら、もっといろいろとチャレンジできそうだなと思って、シリアスなヒューマンドラマの方向に寄っていった形です。
(編集担当・内野) 私は、英貴さんの作品のちょっと毒っ気もある感じがすごく面白いと思っていたので、声をかけたとき、それを活かした作品をやって欲しいとお伝えしたんです。それが、そのときの英貴さんにちょうど刺さって、こういった話になっていったのかなと思っています。
内野さんに声をかけていただいた時期って、編集さんにギャグものを求められることがすごく多くて。最初はコメディやラブコメで考えていました。ただ、私の過去作品に「S渡さんとM村くん」という作品があるんですけど、趣味で描いたプロトタイプと、その後に描いた商業版の2種類があって。内野さんは、プロトタイプのちょっと暗くてシリアスな感じのほうが好みだとおっしゃっていたんです。だから、思い切って暗いほうに寄せてみました。実は、内野さんと組むまで、趣味以外でシリアスなものを描いたことはほとんどなかったんですよ。だから、最初は心配もありましたが、内野さんが「好き」と言ってくれたからいいんだと思って、チャレンジさせていただきました。
──「1年A組のモンスター」で、商業での作風の幅が大きく広がったわけですね。
はい。この作品でシリアスなストーリーものという新しい道が開けて、コメディと合わせて2つの軸ができたんです。当時、暗いというかシリアスな話を描かせてもらえるところはなかなかなかったですし、いくら感謝してもしきれないですね。
──5巻予定だった物語を延長することになったのは、どのタイミングだったのですか?
1巻が重版かかったタイミングで、終わる時期は決めずに描いていきましょうというお話がありました。
「女王の教室」のような作品をイメージ
──自見先生のような個性的な教師を主人公にしたきっかけを教えてください。
私は実写作品が好きで、映画とドラマをすごくたくさん観るのですが、好きな作品に「女王の教室」や「GTO」みたいな、変わった教師が登場するものも多くて。そういった教師ものを観て感じてきた面白さを思い出しながら、「女王の教室」みたいな作品を今の感覚で私が描いたらどうなるのかなとイメージしました。
──先生だけではなく、問題児ばかりの生徒たちも非常に個性的です。こういった尖ったキャラクターやその行動を考える際は、現実の人物や事件からヒントを得ることもあるのですか?
たぶん、読んで下さっている皆さんも「これはあの事件かな?」とか、類似の事件を思い浮かべたことがあると思うんですけど……作中の事件の多くは、実際にあった事件を調べて、それを参考にしています。そこは少し悩んだところでもあるのですが、ファンタジーなお話にはしたくなかったので。キャラクターも実際の事件に関わった人を参考にしましたし、私の周りにいた問題児がもとになったりしています(笑)。
──学生時代の印象的な先生を参考にしている部分もありますか?
若干あります。過去にとてもお世話になった先生が、問題を起こして退職したことがあるんです。すごくいい先生だったんですよね……。だから、先生も人だし、人は何をするかわからないとはずっと思っていて。生徒からは見えていない先生の裏の顔を描きたいという意識も常にありました。
──キャラクターの中で最初の想定以上に動いたり、想定外の方向に動いたりしたキャラクターはいますか?
想定外は、(小田)真紀ちゃんと(奥菜)渚沙ちゃんですね。この2人は自見先生のことを恋愛的な意味では好きじゃないのに、すごく動いてくれるから、思っていた以上にありがたい存在になりました。桃ちゃんや(万里)茉莉ちゃんたちは、どうしても恋愛感情が原動力になっている部分が大きいし、(薮)つばきちゃんに関しては、自分のやってほしいことをやってもらうためみたいな取引条件が絶対にある感じだったんです。
──行動するときの条件や行動する方向が決まっている感じだったのですね。
そうですね。彼女たちに比べると、真紀ちゃんと渚沙ちゃんは自分の気持ちだけで動いてくれるので、すごく楽でした。
──そういうキャラクターには、より愛着が湧いたりもするのでしょうか?
この2人はお気に入りだし、実は私は真紀ちゃんが一番好きなんです。誰にも入れ込んでない傍観者的な立ち位置でいてくれるから本当に動かしやすくて、ありがたいキャラクターになったなと思います。最初は、もう少し小物で終わる予定でしたが、長期連載になったタイミングで切り替えて、設定を少し足していったキャラクターです。
──では、お気に入りとは別の意味で、こういうキャラクターを描けたのは初めてだなと思うような特別な手応えや思い入れのあるキャラクターはいますか?
たぶん、読者の皆さんも思うところがいっぱいあると思うので、成功か失敗かはわからないし、手応えとは少し違うんですけど……。学園もののいわゆるヒロイン枠に収まっているキャラクターが逮捕されるネームを描いてOKをもらえることは、私のマンガ家人生の中で、もう二度と無いでしょうね(笑)。他社さんだったら、(描写として)「その手前で止めない?」って言われたと思います(笑)。
──確かに、ラスボスのようなヒロインだったつばきが逮捕される展開は、衝撃でした。英貴さんもOKが出るとは思わず、ネームを提出したのですか?
基本的にネームを作るときは、できれば、やりすぎだと思うところまで描いて、編集さんに止めてもらおうという意識で描いているので。ぶっ飛んだマンガを描きたい人は、みんな一迅社さんに来たら良いと思います(笑)。
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生徒はヤバいけど、先生はもっとヤバい


