『ばけばけ』厳しすぎる女中・クマの意外な「身の上」が明らかに 小泉八雲は似た境遇の少女を8年も雇ってた? 著作のモデルにも
連続テレビ小説『ばけばけ』では第20週から熊本編が始まりました。熊本では新キャラの女中・クマが話題です。
もう1人「呪われた女」も出てくるらしいが

2025年後期のNHK連続テレビ小説『ばけばけ』は、1890年に来日し、『知られぬ日本の面影』『怪談』などの名作文学を残した小泉八雲(パトリック・ラフカディオ・ハーン)と、彼を支え、「再話文学」の元ネタとなるさまざまな怪談を語った、妻・小泉セツがモデルの物語です。
本作は第20週から「熊本編」が始まり、「クマ(演:夏目透羽)」という女中の新キャラが登場しました。彼女は「高いお給金」を貰っているからという理由で、主人公「松野トキ(演:高石あかり)」や養母「フミ(演:池脇千鶴)」に絶対に家事をさせず、万が一のことが合ってはいけないとトキから手毬まで取り上げています。
第97話ではトキとフミが、そんなおクマの身の上の話をしました。熊本に来たばかりの頃、トキは夫「レフカダ・ヘブン(演:トミー・バストウ)」に女中はいらないと言ったものの、優しいヘブンは身寄りがないクマを絶対に雇うと言ってきかなかったそうです。
実はヘブンのモデルのラフカディオ・ハーンも、1891年11月に移住した熊本で家族を失った幼い少女を女中として雇い入れていました。ハーンさんとセツさんの夫妻には松江時代からお米という女中がおり、さらに熊本に引っ越す際に、松江の西洋料理店から引き抜いた松という女中も加わっています。
そして、ハーンは熊本でお梅という、家族に次々と先立たれた少女を女中にしました。彼女は1899年に熊本に帰って結婚するまでの8年間、神戸、東京とハーン一家の元で働いています。
ハーンの東京帝国大学時代の教え子・田部隆次が書いた伝記『小泉八雲 ラフカディオ・ヘルン』のなかでは、このお梅は「子守り」と紹介されていました。1893年11月に生まれた長男・一雄の世話を、主に頼まれていたと思われます。
そんなお梅は、ハーンの著作のモデルにもなりました。1897年9月に出版された『仏の畑の落穂』のなかに収録された短編『人形の墓』は、11歳くらいの「イネ」という少女がハーン(1897年当時は小泉八雲に改名)に自分の身の上を語る構成となっており、このイネのモデルがお梅だと言われています。
イネが住んでいた地方では、同じ年にふたつ葬式を出した家は、人形を収めた3つ目の墓を作って供養をしないと、さらなる不幸が続くと言い伝えがありました。しかし、貧しいイネの家では、同じ年に、父、母が続いて亡くなっても人形の墓を作ることができず、同年に兄や祖母が亡くなり、幼い妹は別の家に引き取られて家が途絶えてしまったそうです。
この話を終えたイネは、先に座っていた者の不幸を背負い込まないようにするためのまじないとして、ハーンに自分が座っていた部分の畳を叩いてから座るように言いました。しかし、ハーンは叩かずにそのまま畳に座り、不幸なイネへの優しい思いやりを見せて物語は終わります。
ハーン(ヘブン)が雇った身寄りのない若い女中、という点でおクマはお梅がモデルの可能性が高そうです。彼女はこれから熊本だけでなく、神戸、東京とヘブンたちについてくるのかもしれません。
ただ、『ばけばけ』の熊本編では、芋生悠さんが演じる「吉野イセ」という女性も登場する予定です。彼女は公式サイトで「ある田舎の村のさまざまな言い伝えに詳しい女性。どうやら呪われているらしい」と説明されており、『人形の墓』のイネとの共通点を感じさせます。
『ばけばけ』ではお梅がモデルの女中はクマ、お梅がモデルとなった『人形の墓』のイネに当たる人物はイセという風に、キャラが「分裂」しているのかもしれません。
※高石あかりさんの「高」は正式には「はしごだか」
参考書籍:『小泉八雲 ラフカディオ・ヘルン』(中央公論新社)、『八雲の妻 小泉セツの生涯』(潮出版社)、『仏の畑の落穂』(恒文社)
(マグミクス編集部)


